Tranquillo
トランクィッロ
意味
静かに、穏やかに、平穏に
解説
波ひとつない湖面のような、深い静寂と心の安定。余計な力みをすべて取り除き、透明感のある音色が求められます。
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トランクィッロ
静かに、穏やかに、平穏に
波ひとつない湖面のような、深い静寂と心の安定。余計な力みをすべて取り除き、透明感のある音色が求められます。
Tranquillo は「静かに、穏やかに」。ただしこれは音量の指示ではありません。piano と混同されやすいのですが、tranquillo が指しているのは心理状態のほうです。
ラテン語 tranquillus(凪いだ、平穏な)に由来し、イタリア語では今も「静かな、落ち着いた」を意味します。重要なのは、これが強弱記号ではないという点です。f のまま tranquillo ということもあり得ます。広い空間に響く大きな音が、少しも慌てていない——そういう静けさです。tranquillo を見たときに反射的に音量を落とすと、作曲家が求めた「落ち着き」ではなく、単に聞こえにくい音楽になってしまいます。
穏やかさを最も強く感じさせるのは、実は音色よりもテンポの安定です。ルバートを控え、拍が規則正しく置かれているだけで、聴き手は落ち着きを受け取ります。逆に、音を小さくしても timing が揺れていると、静かというより不安げに聞こえます。まずテンポの揺れを削り、そのうえで音色を整えるという順序が有効です。
tranquillo は性格の指示なので、単独よりも Andante tranquillo、Allegretto tranquillo のように速度用語と併記される形でよく現れます。曲の途中で単独で置かれている場合は、「ここから気持ちを鎮めて」という場面転換の合図と読むのが自然です。ドイツ語圏の作品では ruhig や ruhevoll が同じ役割を担います。マーラーの交響曲第4番第3楽章の Ruhevoll は、その代表的な例です。
ピアノ
打鍵の速度を落とし、鍵盤の底まで時間をかけて下ろします。同じ音量でも、当たりの柔らかい音になります。
弦楽器
ビブラートを細く、遅く。弓は多めに使い、圧を減らすと、音量を保ったまま緊張感が抜けます。
管楽器
音の立ち上がりを柔らかく。タンギングを弱め、ビブラートは控えめにすると落ち着きが出ます。
マーラー 交響曲第4番 第3楽章
Ruhevoll(安らかに)。ドイツ語で tranquillo に相当する指示の代表例です。