Ben marcato
ベン・マルカート
意味
十分に強調して
解説
輪郭をよりはっきりと。
音楽用語辞典 & チューナー・メトロノーム
ベン・マルカート
十分に強調して
輪郭をよりはっきりと。
Ben marcato は「十分に際立たせて」。marcato に、程度を強める ben を添えた形です。
ben は bene(よく)の短縮形で、後に続く指示を控えめに済ませず、はっきり実行することを求めます。marcato だけなら「際立たせて」ですが、ben が付くことで「中途半端にせず十分に」という強調が加わります。molto(非常に)が量の増大を示すのに対して、ben は完全性を示す語です。
marcato は一連の音を一つずつ際立たせる指示です。したがって ben marcato が書かれた区間では、その全体にわたって各音が輪郭を持つ必要があります。一部だけ強くして残りを流すと、指示に応えたことになりません。音量ではなく輪郭の問題であるため、弱音の中でも成立します。
複数の声部が絡む箇所で、特定の声部にこの指示が置かれることがあります。この場合は、その声部の各音が他の声部に埋もれないようにするという意味になります。音量を上げるより、立ち上がりを明確にするほうが効果的です。
グローヴの音楽辞典は marcato の項で、この語の使い方を二通り挙げています。シューマンは「ロマンス」作品28の第1番と第3番で Ben marcato を曲の冒頭に置き、楽章全体の性格を決める指示として使っています。一方ベートーヴェンは弦楽四重奏曲作品18の第6番の緩徐楽章で「Queste note ben marcato(これらの音を十分に際立たせて)」と書き、対象の音を指定しています。同じ語でも、区間全体への指示か、特定の音への指示かは書かれた位置で判断します。
ピアノ
各音を打鍵の瞬間に立ち上げ、音の頭で輪郭を作ります。ペダルで音をつなぐと輪郭が埋もれるため、指示のある区間では踏み替えを細かくするか控えめにします。
弦楽器
一音ごとに弓の圧を加えて立ち上がりを作り、音と音の間を軽く区切ります。弓を大きく使うより、弦に置いた状態から始めるほうが輪郭が出ます。
管楽器
タンギングを一音ごとにはっきり行い、息の量は保ちます。舌だけで強調して息が途切れると、輪郭ではなく雑音になります。
シューマン「ロマンス」作品28 第1番・第3番
曲の冒頭に Ben marcato が置かれ、楽章全体の性格を示す指示として使われている(グローヴの音楽辞典「Marcato」の項が挙げる例)。
ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第6番 作品18-6 緩徐楽章
「Queste note ben marcato(これらの音を十分に際立たせて)」と、対象の音を指定して使われている(同じく「Marcato」の項が挙げる例)。