Spektralmusik
スペクトル楽派
意味
音の倍音構造を分析し利用する様式
解説
音の物理的な響き(スペクトル)そのものを音楽の素材とします。これまでにない幻想的で自然な響きが魅力です。
音楽用語辞典 & チューナー・メトロノーム
スペクトル楽派
音の倍音構造を分析し利用する様式
音の物理的な響き(スペクトル)そのものを音楽の素材とします。これまでにない幻想的で自然な響きが魅力です。
スペクトル楽派は、音の倍音構造(スペクトル)を分析し、それを素材として作曲する方向を指します。1970年代のフランスで形成されました。
ある楽器の音を分析すると、基音と多数の倍音がどのような強さで含まれているかが分かります。この構成を取り出し、それぞれの倍音を別の楽器に割り振って演奏させると、もとの音を管弦楽で「拡大」したような響きが生まれます。1つの音の内部構造が、作品全体の和声の素材になるという発想です。
ジェラール・グリゼー、トリスタン・ミュライユらの名が挙げられます。1970年代にパリで活動し、アンサンブル・ランティネレールがその作品を演奏しました。音響分析の技術的な発展が、この方向の前提にあります。
従来の和声は、音を単位として組み合わせる考え方に基づいていました。スペクトル楽派では、音そのものを分解できる対象として扱います。したがって協和・不協和という区分ではなく、倍音構造にどれだけ近いか(調和的か雑音的か)という連続的な尺度で響きが考えられます。
倍音の構造を再現するため、微分音や特殊な運指が指定されることがあります。また、各奏者の音が単独で聞こえるのではなく、全体で1つの音響を作るため、音程と音量の精度が高く要求されます。個々の表現より、全体の響きへの寄与が優先されます。
アンサンブル(管楽器・弦楽器)
倍音の一部を担当する場合、自分の音が単独の旋律ではなく大きな音響の一成分であることを意識し、指定された音程・音量を精密に保つことで、全体として1つの音色が立ち上がります。
グリゼー《パルシエル(部分音)》(1975年)
18の楽器のために書かれ、冒頭はトロンボーンで演奏された低いホ音(E2)の音響分析(サウノグラム)から得た倍音構造を、各パートに割り振って再現しています。各倍音は四分音単位で近似され、「楽器による音響合成」と呼ばれる手法の代表例です。連作《レザスパス・アクースティック》の第1曲にあたります。