🎵 おんがく手帳

音楽用語辞典 & チューナー・メトロノーム

← 辞典にもどる

Tristan-Akkord

トリスタン和音

構成 🌐 ドイツ語

意味

ワーグナー特有の和音

解説

解決を先延ばしにする、憧れの象徴。音楽史上の転換点となった、官能的でどこへ行くか分からない神秘的な響きです。

トリスタン和音は、ワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》前奏曲の冒頭に現れる和音です。その分析をめぐって多くの議論が積み重ねられてきました。

構成音

前奏曲の最初に現れるこの和音は、下からファ、シ、レ♯、ソ♯の4音で構成されます。低音から順に、増4度、増6度、増9度という音程関係になります。この和音は、それ自体としては既存の和音の分類に収まりますが、置かれた文脈の中でどう機能しているかが問題になります。

分析が定まらない理由

この和音は、直前の音から半音階的な動きで到達し、次も解決せずに進みます。従来の和声理論では、和音の機能は前後の関係で決まります。この箇所では前後がともに確定していないため、何の和音として機能しているかを一意に定められません。多数の分析が提示されてきましたが、決着していません。

解決の遅延

前奏曲では、緊張が生じても解決が与えられず、次の緊張へ進むという構造が繰り返されます。解決が保留されたまま音楽が続くこと自体が、作品の主題である満たされない憧れと対応していると論じられます。この和音は、その構造の最初の提示にあたります。

音楽史上の位置

調性の枠が緩んでいく過程の重要な事例として扱われます。ただしこの1つの和音が転換点であったという説明は単純化を含みます。半音階的な和声の展開は複数の作曲家によって進められており、この作品はその流れの中に位置づけられます。

演奏のヒント

オーケストラ全般

この和音を演奏する際は、解決を先送りにする緊張感を保つため、音量を早く落とさず、次の和音へ向かう推進力を残したまま鳴らし続けます。

混同しやすい用語

この指示が使われる曲

ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」終幕「愛の死」

前奏曲冒頭で提示されたトリスタン和音の緊張が、オペラ全曲を通してようやくこの終幕で解決を迎えます。作品全体が1つの和音の解決を待つ構造になっている例として知られます。

❤️ 関連する構成用語

← 構成の用語一覧へ