協和と不協和 — consonance・dissonance・解決
consonance(協和)は複数の音が溶け合って安定して聞こえる響きの性質、dissonance(不協和)は緊張を伴い、より安定した響きへ進みたくなる不安定さを感じさせる性質です。consonant・dissonant は、それぞれの性質を持つ音程や和音を形容する語です。
イタリア語
イタリア語では consonante(協和する)、dissonanza(不協和)と言います。
解決と係留
resolution(解決)は不協和な音や和音が協和へ進む動き、suspension(係留)は前の和音の音を保持して一時的な不協和を作り、その後隣の音へ進んで解決させる技法です。
協和音
耳に心地よく響く、安定した和音や音程。音楽の到達点や、癒やしの場面に使われます。
Consonance(協和)は、複数の音が同時に鳴らされたときに、安定して心地よく溶け合って聴こえる響きの性質。
物理的な裏づけ
協和と感じられる音程の多くは、2つの音の周波数比が単純な整数比に近い関係にある。オクターブ(2:1)や完全5度(3:2)はその代表で、周波数比が単純であるほど、音波同士の重なりが規則的になり、うなりが少なく安定して聴こえる。ただし、どこまでを協和とみなすかは時代や文化によって基準が異なり、歴史的に協和の範囲は徐々に広がってきた。
不協和との相対性
協和はそれ単独で絶対的に定義されるものではなく、不協和との対比の中で機能する。不協和な響きが協和へ解決することで音楽に進行感が生まれるため、協和は「動きが落ち着く到達点」としての役割を持つ。
安定して心地よく響く
数学的に整った振動比を持つ。安らぎや終結感を音楽に与えます。
Consonant(コンソナント)は、協和(consonance)の性質を持つ、安定して心地よく響く音程や和音を形容する語。
consonanceとの違い
consonanceが「協和」という響きの性質・概念そのものを指す名詞であるのに対し、consonantはその性質を持つ具体的な音程・和音を形容する形容詞として使われる。「この音程はconsonantである」というように、個々の響きを評価する際に用いられる。
Consonante は「協和する」。2つ以上の音が同時に鳴ったとき、溶け合って安定して聞こえる状態を指します。
協和の物理的な根拠
ラテン語の con(ともに)と sonare(響く)から成り、原義は「ともに響く」です。2音の振動数の比が単純な整数比であるほど、波形が規則的に重なり、濁りのない一つの響きとして聞こえます。オクターブは1対2、完全5度は2対3、完全4度は3対4、長3度は4対5です。比が単純な順に協和の度合いが高くなります。
完全協和と不完全協和
伝統的な理論では、オクターブ・完全5度・完全4度を完全協和音程、長短3度・長短6度を不完全協和音程と分類します。前者は溶け合いが強く、後者は溶け合いながらも色を持ちます。中世には3度が不協和として扱われていた時期があり、協和とされる範囲は歴史的に変化してきました。
協和だけでは音楽にならない
協和音のみで構成された音楽は安定しますが、動く理由を持ちません。不協和が生じて解決へ向かうという運動があって初めて、和声に方向が生まれます。協和は不協和との対比の中で機能する概念です。
演奏のヒント
弦楽器・鍵盤楽器
協和音程を美しく響かせるには、音程を完全に合わせることが何より重要です。わずかなずれでもうなりが生じ、溶け合いが崩れます。
この指示が使われる曲
アルヴォ・ペルト「シュピーゲル・イム・シュピーゲル」
単純な三和音を軸にした「ティンティナブリ様式」で書かれ、不協和をほとんど用いない澄んだ協和音の響きを特徴とする作品です。
濁った響き
これがない音楽は、塩のない料理のようなもの。緊張感こそが美しさを際立たせます。
Dissonance(不協和)は、複数の音が同時に鳴らされたときに、緊張感を伴い、協和した響きへ進みたくなるような不安定さを感じさせる性質。
緊張と解決
不協和な響きは、それ自体で完結せず、より安定した協和の響きへ進むことを聴き手に予感させる。この「不安定から安定へ」という動きが、和声進行に方向性と推進力を与える。西洋の調性音楽は、不協和の生成と解決を繰り返す仕組みを軸に組み立てられている。
基準は時代とともに変化する
何が不協和とみなされるかは固定的ではない。ルネサンス期には不協和とされた音程が、後の時代には協和として扱われるようになるなど、協和・不協和の境界線は音楽史の中で少しずつ移動してきた。20世紀以降の音楽では、不協和を「解決すべきもの」としてではなく、それ自体で独立した響きとして用いる作品も現れている。
不安定で緊張を伴う響き
濁っているが、それが解決(協和音へ移動)する瞬間にこそ、音楽の最大の快感があります。
Dissonant(ディソナント)は、不協和(dissonance)の性質を持つ、緊張感を伴う不安定な音程や和音を形容する語。
dissonanceとの違い
dissonanceが「不協和」という響きの性質・概念そのものを指す名詞であるのに対し、dissonantはその性質を持つ具体的な音程・和音を形容する形容詞として使われる。
Dissonanza は「不協和」。同時に鳴った音がぶつかり、緊張を生む状態を指します。音楽を前へ進める原動力になります。
不協和は欠陥ではない
ラテン語の dis(離れて)と sonare(響く)から成ります。振動数の比が複雑であるほど波形の重なりが不規則になり、うなりや濁りとして知覚されます。ただしこれは音楽上の欠陥ではありません。不協和が解決を求め、協和へ向かうという運動が、和声の推進力そのものです。不協和がなければ音楽は動く理由を失います。
解決という手続き
伝統的な和声法では、不協和音は準備され、鳴らされ、解決されるという手順を踏みます。掛留音がその典型で、前の和音の音を保持して次の和音でぶつけ、その後順次進行で収まります。この手順があるため、不協和は唐突な事故ではなく、聴き手が予期し追える出来事になります。
基準は変化してきた
何を不協和とみなすかは歴史的に変わってきました。3度が不協和として扱われた時代があり、三全音は中世に忌避された一方で、後には属七の和音の中核として使われるようになりました。20世紀以降は、解決を伴わない不協和が常態として扱われる作品も多くあります。協和・不協和は物理的な事実に基づきながら、その扱いは様式によって決まります。
演奏のヒント
弦楽四重奏
不協和な半音階の重なりを演奏する際は、音程を曖昧にせず正確に取ることで、緊張感が濁りではなく「不協和として意図されたもの」に聞こえます。
この指示が使われる曲
モーツァルト 弦楽四重奏曲第19番 K.465「不協和音」
序奏で半音階的な不協和が次々に重なり、この序奏から「不協和音」の愛称で呼ばれる作品です。
不安定な音が安定した音へ進むこと
緊張からの解放。このプロセスを繰り返すことで、音楽は前へと進み続けます。
Resolution(解決)は、不協和な音・和音が、それに続く協和した音・和音へ進む動きを指す用語。
声部ごとの動き方
和声全体としての解決は、多くの場合、不協和を構成する個々の音がそれぞれ隣り合う音へ順次進行することで実現する。特に、係留(サスペンション)で保持された不協和音は、下へ1音(多くは半音か全音)進んで解決するのが基本的な型とされる。
解決を先延ばしにする技法
不協和がすぐには解決されず、別の不協和に進んでから改めて解決する、あるいは解決すべき音が別の声部に受け渡されるなど、解決を引き延ばす書法も多く使われる。これにより緊張が長く保たれ、実際に解決が訪れたときの効果が強まる。
前の音をわざと遅らせて解決させること
切ない溜め。期待をじらすことで、解決した時の喜びや美しさを倍増させます。
Suspension(サスペンション、係留)は、和音が交代する瞬間に、前の和音の音をあえてそのまま保持することで一時的な不協和を作り出し、その後隣の音へ進んで解決させる技法。
3つの段階
サスペンションは通常、①前の和音の中で協和していた音を(②)次の和音に持ち越して不協和を作り、③その音が隣接する音へ下行して解決する、という3段階の流れを持つ。この流れのうち、持ち越された音が不協和として鳴っている瞬間そのものがサスペンションと呼ばれる。
緊張を作る手段としての価値
和音が交代する瞬間に自然に生まれる協和ではなく、あえて音を遅らせて不協和を挟むことで、その解決の瞬間により強い安堵感を作り出す。旋律線を滑らかに保ちながら和声的な緊張を加えられる点で、対位法的な書法において重要な技法とされる。