通奏低音 — basso continuo・figured bass
basso continuo(通奏低音、略して continuo)は、低音の旋律と和音の指示にもとづいて、鍵盤楽器などが和声を即興的に補うバロック音楽の伴奏の仕組みです。
呼び名
低音に数字を添えて和音を指示する記法を figured bass(数字付き低音)と呼びます。英語の thoroughbass、ドイツ語の Generalbass も、通奏低音を指す呼び方です。
担当する楽器
和音を鳴らす楽器(チェンバロ、オルガン、リュートなど)と、低音の旋律を担う楽器(チェロ、ヴィオローネ、ファゴットなど)の組み合わせで演奏されるのが通例です。
B.c.Basso continuoバッソ・コンティヌオ
イタリア語
通奏低音
低音楽器と鍵盤楽器が即興的に和音を補う、バロック音楽の土台です。アンサンブルの要(かなめ)となります。
Basso continuo(通奏低音)は、バロック音楽で標準的だった伴奏の仕組み。低音の旋律線と、それに付けられた和音の指示(数字)をもとに、鍵盤奏者などがその場で和音を組み立てて演奏する。
数字付き低音との関係
通奏低音のパートには、低音の音符の下や上に数字が書き添えられることが多く、これは低音から数えた音程を示す。演奏者はこの数字をもとに、どの和音を重ねるかをその場で判断して弾く。同じ低音・同じ数字でも、演奏者によって選ぶ音の並べ方は異なってよく、即興の要素を含む。
担当する楽器
通奏低音は通常、和音を鳴らせる楽器(チェンバロ、オルガン、リュートなど)と、低音の旋律だけを担う楽器(チェロ、ヴィオローネ、ファゴットなど)の組み合わせで演奏される。前者が和声を、後者が低音線をそれぞれ担当し、両者が揃って一つの通奏低音パートを構成する。
低音の伴奏システム
低音の旋律と、それに基づく即興的な和音。バロック音楽の「魂」とも言える土台です。
Continuo(コンティヌオ)は basso continuo(通奏低音)の略称。低音の旋律と和音の指示にもとづき、鍵盤楽器などが和声を即興的に補う、バロック音楽の伴奏の仕組みを指す。
呼び方の違い
「通奏低音」「basso continuo」「continuo」はいずれも同じ仕組みを指す呼び名で、意味の違いはない。楽譜や文献では文脈に応じて使い分けられているだけで、continuo はその中でも最も簡略な呼び方として使われる。
数字で示された和音指示
低音音符の上に書かれた数字を見て、鍵盤奏者が即興的に和音を補う、バロック音楽の「暗号」です。
数字付き低音は、低音の音符に数字を添えて和音を指示する記法です。鍵盤奏者はそれを見て和音を即興的に組み立てます。
数字が示すもの
数字は、低音から数えた音程を示します。6 なら低音の6度上の音を含む和音、つまり第1転回形です。6/4 なら第2転回形、7 なら七の和音です。数字がない場合は、低音を根音とする基本形の和音を意味します。♯ や ♭ が数字に添えられれば、その音を変化させます。数字が示すのは含まれる音であり、それをどの高さにどう配置するかは奏者が決めます。
何を奏者に委ねているのか
和音の構成音は指定されますが、配置、音数、装飾、リズムは書かれていません。したがって同じ楽譜から、簡素な和音だけの実現も、装飾を伴う豊かな実現も生まれます。この余地を埋めるのが通奏低音奏者の仕事であり、当時は演奏の一部として当然のこととされていました。
現代の楽譜との関係
現代の実用譜では、編者が右手の和音を書き起こしたもの(実現譜)が付されていることが多くあります。これは一つの解釈であり、唯一の正解ではありません。原典に近い譜面では数字だけが記され、奏者が自分で実現することになります。どちらを使うかで演奏の性格が変わります。
呼び名
イタリア語では basso continuo(続いていく低音)、ドイツ語では Generalbass、英語では figured bass または thoroughbass と呼ばれます。数字に注目した呼び方(figured)と、低音が曲を通して続くことに注目した呼び方(continuo、thorough)が併存しています。
演奏のヒント
鍵盤(通奏低音)
数字は和音の構成音を低音からの音程で示します。数字が無い場合は原則として三和音を弾きます。
この指示が使われる曲
コレッリ ヴァイオリンソナタ集 作品5
ヴァイオリンパートに対し、鍵盤奏者が数字付き低音を見て和音を組み立てる通奏低音の実例です。
Basso continuoの英語名
「楽曲を通して流れる低音」。音楽の構造的中心を指す、歴史的に極めて重要な用語です。
Thoroughbass は通奏低音の英語名です。「曲を通して(thorough)流れる低音」という構造の語で、イタリア語の basso continuo に対応します。
語の成り立ち
thorough は through(〜を通して)の古い形で、原義は「貫いて」です。したがって thoroughbass は「曲全体を貫く低音」を意味します。イタリア語の continuo(続いていく)、ドイツ語の Generalbass(全体にわたる低音)も同じ発想の語で、いずれも低音が途切れず続くことに注目しています。
何を担っているのか
この低音は伴奏の一部ではなく、楽曲の和声的な骨格そのものです。バロック期の作品では、旋律楽器が休んでいても低音は続き、和声の進行を保ちます。したがって通奏低音を担う奏者は、伴奏者というより構造の担い手にあたります。チェロやファゴットなどが低音の線を弾き、鍵盤楽器が和音を補うという組み合わせが一般的です。
時代の区切りとして
通奏低音が音楽の基礎であった時期を「通奏低音時代」と呼ぶことがあり、およそ1600年から1750年頃、つまりバロック期に重なります。この記法が使われなくなることが、バロックから古典派への移行の指標の一つとして扱われます。
演奏のヒント
チェンバロ
通奏低音を弾く際は、独奏楽器の動きを聞きながら和音の厚みと装飾の量を調整します。独奏部では控えめに、合奏の支えが必要な箇所では厚く弾くという判断が求められます。
この指示が使われる曲
バッハ「ブランデンブルク協奏曲第5番」
チェンバロに長大な独奏部分が与えられ、通奏低音を担う楽器を独奏楽器として扱った作品として知られます。