トップ / 速度 / 程度を表す語 — ben・molto・poco・ma non troppo 程度を表す語 — ben・molto・poco・ma non troppo molto(非常に)、assai(十分に、非常に)、poco / un poco(少し)、più(より多く)、meno(より少なく)、non troppo / ma non troppo(〜すぎないように)は、それだけでは指示にならず、Allegro molto、poco rit. のように他の指示に添えて度合いを調整する語です。
assai の強さ assai が molto より強いのか弱いのかについては、見解が分かれています。
poco と poco a poco poco は「少し」、poco a poco は「少しずつ」で、意味が異なります。poco rit. は「少し遅く」、poco a poco rit. は「少しずつ遅く」です。
ben・sempre・appena ben(bene の短縮形)は「十分に、よく」で、ben marcato のように後に続く語の程度を強めます。sempre(常に)は sempre legato のように、その状態を続けることを示します。appena は「かろうじて、わずかに」で、程度を限定します。
ドイツ語の sehr・wenig ドイツ語では sehr(非常に)と wenig(少し)が、sehr langsam(非常に遅く)、ein wenig(少し)のように同じ働きをします。
十分に、よく、はなはだ
「十分に、よく」。bene の短縮形で、ben marcato のように後の語の程度を強める。
Ben は「十分に、よく」。bene の短縮形で、後に続く語の程度を強めます。
程度を強める語ben marcato(十分に際立たせて)、ben tenuto(十分に保って)、ben ritmato(十分にリズミカルに)のように使われます。後に続く指示を控えめに済ませず、はっきり実行することを求めます。appena(かろうじて)の反対方向にあたります。
語形イタリア語の bene(よく)が、子音の前で ben に短縮されます。楽譜では ben の形で現れることが一般的です。molto(非常に)が量の増大を示すのに対して、ben は「十分に、しっかりと」という完全性を示します。
非常に、大いに
「非常に」。Allegro molto のように他の指示に添えて度合いを強める。
Molto(モルト)はイタリア語で「非常に、大いに」を意味する強意の副詞。単独では速度を指定せず、Allegro molto や Molto Allegro のように他の速度・表情用語に添えて度合いを強める。
語順による違いMoltoはAllegroなどの前後どちらにも置かれるが、度合いを強めるという働き自体に大きな違いはない。
十分に、非常に
「十分に、非常に」。Allegro assai のように添えて使う。molto より強いか弱いかは見解が分かれる。
Assai(アッサイ)はイタリア語で「十分に、非常に」を意味する強意語で、Allegro assai のように速度・表情用語の後ろに添えて度合いを強める。
強さの程度をめぐる議論assaiがどの程度の強さを示すかについては見解が分かれている。現代イタリア語のassaiは「かなり、非常に」という強い意味で使われるが、古い時代の用法ではmoltoよりも弱い「まあまあ、十分に」程度を指していたとする説もあり、歴史的な用法の変化について議論がある。
少し、わずかに
「少し」。poco rit.(少し遅く)のように他の指示に添えて使う。poco a poco(少しずつ)とは意味が違う。
Poco(ポーコ)はイタリア語で「少し、わずかに」を意味する程度の副詞。Poco accelerando(わずかに加速して)のように、変化の幅を控えめに指定する際に使われる。
Un pocoとの関係冠詞を伴うUn poco(あるいはPocoはその短縮形)も同じ意味で使われ、両者に意味上の違いはない。
Un poco はイタリア語で「少し」。冠詞 un を伴わない poco と意味は同じで、Un poco allegro と Poco allegro は同じ内容を指します。
冠詞の有無は意味を変えないpoco は「少し」を意味する語で、un poco は不定冠詞を付けた形です。イタリア語として自然な言い方の違いであり、程度の差を示すものではありません。楽譜でどちらが書かれているかによって演奏を変える必要はありません。
注意すべき別の語との違い混同してはならないのが poco a poco(少しずつ)です。これは程度ではなく変化の速さを指す指示で、「行きすぎるな」という制動の意味を持ちます。また、poco meno(少しより少なく)や pochissimo(きわめてわずかに)のように、poco を含む別の形もあります。un poco と poco a poco の混同は、実際に起きやすい読み間違いです。
演奏のヒント共通
un poco が付く指示は、その語だけの指示より控えめに解釈します(例: un poco allegro は allegro より少し抑えたテンポ)。
より多く
「Più mosso (より速く)」のように、前のテンポより速くすることを指示します。
Più(ピウ)はイタリア語で「より多く」を意味する比較の副詞。Più mosso(より動きを増して、速く)のように、直前の速度からの相対的な変化を指定する。
比較の基準Menoと同様、絶対的な速度そのものではなく、直前のテンポと比べた相対的な変化を示す点が特徴。
より少なく
「Meno mosso (より遅く)」のように、前のテンポより遅くすることを指示します。
Meno(メーノ)はイタリア語で「より少なく」を意味する比較の副詞。Meno mosso(より動きを抑えて、遅く)のように、直前の速度からの相対的な変化を指定する。
比較の基準絶対的な速度を指定するのではなく、その直前に置かれていたテンポと比べて「より少なく(遅く、弱く)」することを示す相対的な指示である点が特徴。
甚だしくなく、すぎないように
「〜すぎないように」。Allegro non troppo のように、直前の指示が行きすぎないよう制限する。
Non troppo(ノン・トロッポ)はイタリア語で「あまり~しすぎない」を意味する制限語。Allegro ma non troppo(速く、しかし速すぎずに)のように、直前の指示が行き過ぎないよう歯止めをかける。
troppoの意味troppoは「あまりに、過度に」を意味する語で、non troppoはそれを否定した形。単独の速度指示ではなく、他の指示に対する制限として機能する。
♪ Ma non troppoマ・ノン・トロッポ イタリア語
しかしはなはだしくなく
「Allegro ma non troppo (速く、しかし速すぎずに)」のように、極端な表現を避けることを指示します。
Ma non troppo(マ・ノン・トロッポ)はイタリア語で「しかし、あまり~しすぎない」を意味する制限句。Allegro ma non troppo(速く、しかし速すぎずに)のように、直前の指示に歯止めをかける。
Non troppoとの違いmaは「しかし」を意味する接続詞で、直前の指示との対比を明確にする働きを持つ。制限の内容自体はNon troppoと変わらない。
よく、適切に
「よく、十分に」。子音の前では ben と短縮される。
Bene はイタリア語で「よく、十分に」。単独ではなく、後に続く指示の程度を強めるために使われます。
ben という短縮形子音の前では ben に短縮されます。ben marcato(十分に際立たせて)、ben tenuto(十分に保って)、ben ritmato(十分にリズミカルに)といった形が楽譜に現れます。母音の前や単独では bene の形が保たれます。楽譜では ben のほうが圧倒的に多く見られます。
molto との違いmolto(非常に)は量の増大を示します。bene は「十分に、しっかりと」という完全性を示す語です。ben marcato は際立たせ方をより強くするというより、中途半端に済ませないという意味になります。したがって、音量を上げることが答えとは限りません。
語源ラテン語の bene(よく)に由来し、bonus(良い)と同じ語根です。英語の benefit(利益=よく為すこと)、benevolent(善意の)、benediction(祝福)も同じ語根を持ちます。反対の male(悪く)からは malicious、malady が派生しています。
演奏のヒント共通
後に続く語を強める副詞なので、まず後続の指示そのものを丁寧に実行することを優先します。
かろうじて、わずかに
「かろうじて、わずかに」。appena udibile(かろうじて聞こえる程度に)のように使う。
Appena は「かろうじて、わずかに」。単独ではなく、他の語と組み合わせて程度を限定します。
程度を弱める語appena udibile(かろうじて聞こえる程度に)、appena marcato(わずかに際立たせて)のように、後に続く語の程度を最小限に抑えます。poco(少し)よりさらに弱く、ほとんど行わないという方向です。
「ほとんどしない」という指示この語が付いた指示は、実行するかしないかの境目に置かれます。したがって、はっきり実行すると指示から外れます。聴き手がそれと気づかない程度に留めることが求められます。
常に、絶えず
「常に」。sempre legato のように他の指示に添えて継続を示す。sempre più は「ますます」。
Sempre は「常に」。単独では意味を持たず、他の指示に添えてその状態の継続を示します。
範囲を明示する語指示は、どこまで効力を持つかが曖昧になりがちです。sempre を添えることで、次に別の指示が出るまでその状態を保つことが明示されます。sempre legato(常につないで)、sempre piano(常に弱く)、sempre staccato(常に切って)といった形で使われます。
「さらに」という用法sempre più(ますます)、sempre meno(ますます少なく)という形では、継続ではなく変化の進行を示します。sempre più forte なら、強くなり続けるという意味です。この場合の sempre は「絶えず」であり、状態ではなく変化が続くことを述べています。同じ語が2つの働きを持つため、後に続く語で判断します。
語源ラテン語の semper(常に)に由来します。英語の sempiternal(永遠の)も同じ語根です。
非常に、とても
ドイツ語で「非常に」。sehr langsam のように他の語に添えて使う。
Sehr はドイツ語で「非常に」。イタリア語の molto や assai に相当し、単独ではなく他の語に添えて程度を強めます。
英語の sore と同じ語根sehr はゲルマン語系の語で、英語の sore と語源を共有します。もともとは「痛みを伴って、激しく」という意味で、そこから程度を強める副詞へ変化しました。英語でも古い言い方に sore afraid(ひどく恐れて)という用法が残っており、同じ変化の跡が見られます。程度の強調が痛みの語から生まれるのは、複数の言語で見られる現象です。
組み合わせの例sehr langsam(非常に遅く)、sehr zart(非常に繊細に)、sehr kräftig(非常に力強く)のように使われます。ドイツ語で指示を書く楽譜では、この語が頻繁に現れます。マーラーの楽章表示のように、複数の語を連ねた長い指示の中で程度を調整する役割を担います。
対になる語wenig(少し)、etwas(やや)、nicht zu(〜しすぎないで)が程度を抑える側の語です。sehr との対で、指示の強さが調整されます。
演奏のヒント声楽・器楽共通
sehr が添えられた語は、その語だけを演奏したときより一段階強く扱います。zart(繊細に)に sehr が付けば、通常の繊細さの限界に近いところまで踏み込むという読み方になります。
少し、わずかに
ドイツ語で「少し」。ein wenig の形でも使う。
Wenig はドイツ語で「少し」。イタリア語の poco に相当し、他の語に添えて程度を抑えます。
組み合わせの例ein wenig langsamer(少し遅く)、ein wenig zurückhaltend(少し控えて)のように使われます。ドイツ語では ein(不定冠詞)を伴って ein wenig とする形が一般的で、これはイタリア語の un poco と同じ構造です。どちらの言語も、冠詞の有無で意味は変わりません。
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