撥弦楽器 — ハープ・ギター・マンドリン・リュート
harp(ハープ、イタリア語 arpa)は多数の弦を1本ずつ異なる音高に張った撥弦楽器で、オーケストラで使われるペダルハープは47本前後の弦と7本のペダルを持ちます。分散和音を意味する arpeggio は arpa から派生した語です。
ギターとマンドリン
chitarra はイタリア語でギターです。標準的な調弦は低いほうから E・A・D・G・B・E で、記譜より1オクターブ低く鳴ります。mandolino(マンドリン)は多くが4組8本の複弦を持ち、ピックで同じ音を速く反復するトレモロ奏法で音を伸ばします。
リュートとテオルボ
lute(リュート)は洋梨形の胴を持つ撥弦楽器で、名はアラビア語 al-ʿūd に由来するとされます。theorbo(テオルボ)はリュート属の大型の楽器で、低音弦専用の長い延長ネックを持ち、バロック時代に通奏低音を担いました。
バンジョー
banjo(バンジョー)は円形の胴に膜を張った撥弦楽器で、西アフリカの楽器にルーツを持つとされ、アメリカで発展しました。
多数の弦を持つ撥弦楽器
多数の弦を1本ずつ異なる音高に張った撥弦楽器。ペダルハープは7本のペダルで各音を半音ずつ変えます。
Harp(ハープ)は多数の弦を、1本ずつ異なる音高に調律して張った撥弦楽器。指で弦の長さを変えて音高を作る楽器ではなく、弦の数だけ音がある点が根本的に異なる。
なぜ弦を押さえないのか
弦楽器の多くは指板を指で押さえて弦の振動する長さを変え、1本の弦から複数の音を出す。ハープにはこの指板がなく、その代わりに音の数だけ弦を張ることで対応している。オーケストラで使われるペダルハープは47本前後の弦を持つ。
ペダルで半音を作る
各弦はあらかじめ特定の音階に調律されており、足元の7本のペダルを踏むと、弦の途中にある円盤が回転して弦を挟み込み、実質的な弦長を変えて半音上げる。7本のペダルはそれぞれ音名の1音ずつに対応し、3段階に踏み分けられる。
ハープ
イタリア語でハープ。分散和音(アルペッジョ)の語源でもあります。
Arpa はイタリア語で「ハープ」を意味する語。分散和音を意味する arpeggio の語源でもある。
Arpeggio の語源そのもの
分散和音を意味するイタリア語 arpeggio は、arpa(ハープ)に動詞語尾を付けた派生語 arpeggiare(ハープのように弾く)から作られた名詞。arpeggio は文字通り「ハープのように弾くこと」を意味する語であり、arpa という楽器名がそのまま奏法用語の語源になっている。
ギター
イタリア語でギター。記譜より1オクターブ低く鳴ります。
Chitarra はイタリア語でギター。指または爪で弦をはじく撥弦楽器で、和音と旋律を一人で同時に演奏できる点が特徴です。
6本の弦と記譜
標準的な調弦は低いほうから E・A・D・G・B・E です。楽譜はト音記号で書かれますが、実際には記譜より1オクターブ低く鳴る移調楽器です。他の楽器と合わせるとき、この点を忘れると和声の判断を誤ります。またタブ譜という、弦とフレットの位置を直接示す記譜法も広く使われます。
減衰する楽器としての設計
はじいた音は鳴らした瞬間から減衰していきます。したがって、長い音符が書かれていても実際には響きが消えるため、フレーズのつながりは音の間隔と音量の配分で作る必要があります。
音色の選択肢
どこをはじくかで音色が大きく変わります。ブリッジ寄りは硬く鋭く、サウンドホール寄りや指板寄りは丸く柔らかくなります。また爪ではじくか指の腹ではじくかでも変わります。楽譜に指定がないことが多いため、この選択が演奏解釈の中心的な部分になります。
演奏のヒント
ギター
右手の位置を曲想に応じて変えます。同じ位置で通すと単調になります。
合奏
音量が小さいため、他の楽器が引く必要があります。編成の設計段階で考慮します。
この指示が使われる曲
ロドリーゴ「アランフエス協奏曲」
ギター協奏曲の代表作です。
タレガ「アルハンブラの想い出」
トレモロ奏法で、減衰する楽器に持続音を作り出しています。
マンドリン
複弦を持つ撥弦楽器。トレモロ奏法が特徴的。
Mandolino(マンドリーノ)はイタリア語で「マンドリン」を意味する語。複弦を持つ撥弦楽器で、ピック(プレクトラム)による細かいトレモロ奏法が特徴的。
複弦とトレモロ
多くは4組8本の複弦を持ち、2本1組を同時に弾く構造になっている。ギターのように単音を弾くと音がすぐに減衰してしまうため、ピックで同じ音を高速に反復するトレモロ奏法によって音を伸ばすように演奏される。
イタリア発祥の撥弦楽器
リュート属の楽器から発展したイタリアの民俗楽器で、卵型の丸い胴を持つナポリ型が広く知られる。クラシック音楽ではヴィヴァルディの協奏曲や、マーラーやシェーンベルクの管弦楽作品に効果的な彩りとして登場する。
右手のトレモロが表現の要
左手の運指はギターに近いが、音を伸ばす表現のほとんどは右手のトレモロの速さと強さで作られる。同じ音型でも、トレモロを緩やかにすれば穏やかに、密にすれば緊張感のある響きになる。
演奏のヒント
マンドリン
トレモロの速さと粒立ちが音の印象を決めます。速すぎると音が硬くなるため、必要な音量に応じてトレモロの密度を調整します。
この指示が使われる曲
マーラー 交響曲第7番 第4楽章
ギターとマンドリンが加わり、夜の小夜曲(セレナーデ)を思わせる親密な響きを作ります。
梨型の弦楽器
洋梨形の胴を持つ撥弦楽器。ルネサンスからバロック期にかけて広く用いられました。
Lute(リュート)は、洋梨形の胴を持つ撥弦楽器で、名称はアラビア語 al-ʿūd(「その木」の意)が、古フランス語などを経て英語に入ったものとされる。
アラビア語起源の語源
al-ʿūd は中東の撥弦楽器ウードを指す言葉で、定冠詞 al の l を含んだ形がヨーロッパの諸言語に取り入れられ、フランス語 luth、英語 lute、イタリア語 liuto などになったとされる。
折れ曲がったペグボックス
リュートの特徴の一つに、ネックの先端で大きく後方に折れ曲がったペグボックス(糸巻き部分)がある。フレットはガット弦を指板に巻きつけたもので、位置を調整できた。
巨大な長いリュート
非常に長いネックを持ち、深い低音が出る撥弦楽器。バロックの通奏低音で活躍します。
Theorbo(テオルボ)は、リュート属の中でも特に大きく、低音弦専用の延長ネックを持つ撥弦楽器。
2つのペグボックスを持つ構造
通常のリュートと同様、指で押さえて音程を変える弦のためのペグボックスに加え、指板の外側に張られ開放弦のまま鳴らす低音弦専用の、さらに長いネックとペグボックスを持つ。この延長ネックが、テオルボの持つ深く豊かな低音の源になっている。
通奏低音の担い手
バロック時代のオペラや合奏では、テオルボが鍵盤楽器と並んで通奏低音を担う楽器として重用された。単独の低音弦を鳴らしながら上部の弦で和音を添えることができるため、少人数の編成でも十分な低音の支えを提供できた。
バンジョー
円形の胴に膜を張った撥弦楽器。乾いた明るい音色。
Banjo(バンジョー)は、円形の胴に膜を張り、その上に弦を渡した撥弦楽器。乾いた明るい音色を持つ。
太鼓のような構造
木や金属の輪に動物の皮や合成素材の膜を張った胴を持ち、その上にネックと弦を渡した構造を持つ。この膜の存在が、ギターやマンドリンとは異なる、乾いてよく通る音色を生んでいる。
起源と広まり
西アフリカの伝統楽器にルーツを持つとされ、アメリカ大陸に伝わったのち独自の発展を遂げた楽器である。19世紀のミンストレル・ショーを経て広く知られるようになり、現在ではブルーグラスやフォーク、ジャズなど幅広いジャンルで用いられている。
演奏のヒント
共通
5弦バンジョーは最も短い弦(ドローン弦)が独特の響きを加えます。ブルーグラスの奏法で特徴的に使われます。
バンジョー
膜を張った胴の共鳴が特徴的な明るい音を作ります。ピッキングの位置で音色の明るさが大きく変わります。
この指示が使われる曲
アール・スクラッグスの演奏
スリーフィンガー奏法を確立し、ブルーグラスにおけるバンジョーの地位を高めました。