国や地域の舞曲 — ワルツ・ポロネーズ・マズルカ・タンゴ
waltz(ワルツ)は1拍目に重心を置く3拍子の舞曲、polonaise(ポロネーズ)はポーランドに由来する中庸な速さの3拍子の行進的な舞曲、mazurka(マズルカ)はポーランドの民俗舞曲に由来し、1拍目以外にアクセントが置かれることが多い3拍子の舞曲です。
南イタリア・ラテンアメリカ
tarantella(タランテラ。この辞典では tarentella と表記)は南イタリアの速い複合拍子の舞曲、habanera(ハバネラ)はキューバのハバナに由来する2拍子の舞曲、tango(タンゴ)はアルゼンチン・ウルグアイの都市部で生まれた舞曲です。
スペインの舞曲
bolero(ボレロ)、fandango(ファンダンゴ)、cachucha(カチューチャ)は、いずれもスペインの3拍子の舞曲です。dengue はキューバの舞曲とされますが、確実な情報は限られます。
華やかな3拍子の舞曲
「回転する」。社交界の華やかさ、優雅な回転、あるいはウィーン特有の「溜め」のリズムが特長です。
Waltz(ワルツ、円舞曲)は、3拍子で、1拍目に重心を置きながら回転して踊る舞曲。18世紀末から19世紀にかけてウィーンを中心にヨーロッパ中で流行した。
「オンパー」の伴奏形
典型的なワルツの伴奏は、低音を1拍目に、和音を2・3拍目に置く「オン・パッ・パッ」のパターンで書かれる。この単純で規則的な伴奏形が、旋律に自由な起伏を持たせる余地を作り、踊りとしても演奏会用の音楽としても広く用いられる基盤になった。
レントラーからの発展
ワルツは、それ以前にオーストリア・南ドイツの農村で踊られていたレントラーという、より素朴な3拍子の舞曲から発展したと考えられている。宮廷や社交界に取り入れられる過程で、テンポが上がり洗練された形へと変化した。
ポーランドの勇壮な舞曲
騎士道精神を体現する、堂々とした3拍子。独特の装飾とアクセントが、祖国への誇りを物語ります。
Polonaise(ポロネーズ)は、ポーランドに由来する、中庸な速さの3拍子の行進的な舞曲。フランス語で「ポーランド風の」を意味する。
特徴的なリズム型
ポロネーズの多くは、1拍目を8分音符1つと16分音符2つに分け、続く拍を8分音符で刻むリズム型を繰り返し用いる。このリズムが、速すぎず堂々とした足取りの行進的な性格を生む。踊りとしては、宮廷などでの入場行進に用いられる儀礼的な性格を持っていた。
ショパンによる芸術化
ショパンは一連のポロネーズを通じ、もとは実際に踊るための舞曲だったこの形式を、演奏会用の芸術的な作品として発展させた。彼のポロネーズには、母国ポーランドへの思いが込められているとしばしば語られる。
ポーランドの土着的で気まぐれな舞曲
2拍目や3拍目に予想外のアクセントが来ます。素朴な郷愁と、洗練されたリズム感覚が融合しています。
Mazurka(マズルカ)は、ポーランドの民俗舞曲に由来する3拍子の舞曲で、1拍目以外(多くは2拍目または3拍目)にアクセントが置かれる点が特徴。
揺れるアクセント
通常の3拍子は1拍目に重心があるが、マズルカでは2拍目や3拍目に強いアクセントが置かれることが多く、この重心のずれが独特の揺れるような足取りを生む。アクセントの位置は曲や部分によって変化してよく、規則的とは限らない。
ショパンによる芸術化
ポロネーズと同様、ショパンは多数のマズルカを作曲し、民俗舞曲の要素を取り入れながら演奏会用の作品として発展させた。ポーランドの民俗音楽的な音階や和声の響きが取り入れられることも多い。
急速で激しい南イタリアの舞曲
毒蜘蛛に刺された者が踊り続けるという伝説。熱狂的で、息を呑むような超高速なリズム感が命です。
Tarentella(タランテラ。標準的な綴りは tarantella)は、南イタリアに由来する、複合拍子(多くは6/8)の非常に速く激しい舞曲。
名前をめぐる言い伝え
名称は、南イタリアの都市タラントに由来するとも、毒グモ(タランチュラ)に咬まれた毒を汗とともに踊って追い出すという民間伝承に由来するともいわれる。この毒グモにまつわる話は広く語られる伝説だが、実際の医学的根拠があるわけではなく、あくまで民間伝承として伝わっているものである。
曲の性格
拍子は6/8などの複合拍子で書かれることが多く、絶え間なく続く速いテンポと高揚感のある反復が特徴。踊りとしては、次第に速度を上げながら熱狂的な雰囲気を作っていく性格を持つとされる。
キューバ起源の気だるい2拍子の舞曲
オペラ「カルメン」が有名。特徴的な付点リズムが、背徳的で抗いがたい情熱と魅惑を演出します。
Habanera(ハバネラ)は、キューバのハバナに由来する2拍子の舞曲。付点を含む特徴的なリズム型を持つ。
特徴的なリズム型
ハバネラの伴奏には、2拍子の1小節を「付点8分音符+16分音符+8分音符2つ」というパターンで刻む特徴的なリズム型が繰り返し使われる。このリズムは後にタンゴなど他のラテン系舞曲にも受け継がれ、これらの舞曲に共通する足取りの源の一つとされる。
スペイン音楽への影響
キューバで生まれたこのリズムは、19世紀にスペインへ伝わり、スペインの作曲家の作品にも取り入れられた。ビゼーの歌劇《カルメン》に含まれる「ハバネラ」の楽曲は、この舞曲の名を広く知らしめた例として知られる。
アルゼンチン発祥の情熱的な舞曲
鋭いスタッカート、急停止。憂愁と攻撃性が隣り合わせの、ドラマチックで鋭利なリズムが特長です。
Tango(タンゴ)は、アルゼンチン・ウルグアイの都市部で生まれた、シンコペーションを特徴とする2拍子の舞曲。
特徴的なシンコペーション
タンゴの旋律・伴奏には、拍の重心をずらすシンコペーションが多用され、これが独特の緊張感と切迫した歩みを生む。ハバネラのリズム型と類似する要素を持つことから、ハバネラなどラテン系の舞曲の影響を受けて成立したと考えられている。
バンドネオンという楽器
タンゴの合奏(オルケスタ・típica)では、蛇腹を持つ小型のリード楽器バンドネオンが中心的な役割を担うことが多く、その特徴的な音色がタンゴの響きを印象づける要素の一つになっている。
スペインの舞曲、その独特のリズム
3拍子の一定のリズムを刻み続ける。ラヴェルの作品のように、執拗な繰り返しが高揚感を生みます。
Bolero はスペイン発祥の3拍子の舞曲、またはその舞曲に基づく楽曲を指す語です。
スペインの舞曲として
18世紀末にスペインで生まれたとされる舞曲で、カスタネットのリズムを伴う情熱的な性格が特徴です。
ラヴェルの「ボレロ」
モーリス・ラヴェルが1928年に作曲した管弦楽曲「ボレロ」は、同じリズムパターンと旋律を、楽器編成を変えながら約15分間にわたり反復・クレッシェンドさせ続ける作品で、伝統的なスペインのボレロの舞曲そのものとは性格が大きく異なります。
スペインの熱狂的な舞曲
ギターとカスタネットを使用。
Fandango(ファンダンゴ)は、スペインに起源を持つ情熱的な3拍子の舞曲。ギターとカスタネットを伴い、男女が向き合って踊ります。
リズムの特徴
3拍子ですが、ギターの伴奏がしばしば拍の裏を強調し、独特の推進力を生みます。また、踊り手の動きに合わせて音楽が一時停止し、また再開するという構造を持つことがあります。この停止と再開が、ファンダンゴの緊張感の源です。演奏では、この間の取り方が性格を決めます。
クラシック音楽への流入
18世紀以降、スペイン以外の作曲家もこの舞曲を取り入れました。スカルラッティやボッケリーニの作品に現れるほか、モーツァルト「フィガロの結婚」の第3幕にもファンダンゴが登場します。異国的な色彩を求める文脈で用いられることが多く、様式としてのスペインを表す記号になっています。
演奏のヒント
ギター
ラスゲアードによる和音の連打が、この舞曲の推進力を作ります。
ピアノ
左手の伴奏を打楽器的に扱います。均等に刻むとスペイン的な性格が失われます。
打楽器
カスタネットのリズムが踊りの周期を示します。
この指示が使われる曲
モーツァルト「フィガロの結婚」第3幕
ファンダンゴが劇中の舞踏場面で用いられます。
ボッケリーニ ギター五重奏曲第4番
終楽章がファンダンゴで、ギターとカスタネットが加わります。
Cachucha(カチューチャ)は、スペインに由来する3拍子の舞曲。カスタネットを伴って踊られます。
確実に言えること
スペイン起源の3拍子の舞曲で、リズミカルで情熱的な性格を持ちます。19世紀にはバレエの演目として取り上げられ、舞台作品を通じて広く知られるようになりました。ただし、この舞曲の成立の経緯や地域的な分布については、確実な情報が限られます。楽譜でこの語を見た場合は、3拍子であること、カスタネットのリズムを伴う性格であることを手がかりに扱うのが安全です。
国際的な知名度を作った出来事
舞曲としての起源は不確かな一方、この語が広く知られるようになった経緯ははっきりしている。1836年、パリ・オペラ座のバレエ「びっこの悪魔」で、オーストリア出身の舞姫ファニー・エルスラーが演じたカチューチャが熱狂的な成功を収め、この踊りを国際的に有名にした。
演奏のヒント
共通
カスタネットのリズムが土台になる舞曲です。旋律を担当する場合も、カスタネットが刻む拍の輪郭を崩さないよう、リズムの正確さを優先します。
この指示が使われる曲
バレエ「びっこの悪魔」(1836年、パリ・オペラ座)
ファニー・エルスラーが演じたカチューチャが熱狂的な成功を収め、この舞曲を国際的に有名にした。
キューバの軽快な舞曲
独特なシンコペーションを持つリズム形式。
Dengue は、キューバに由来する舞曲を指す語として音楽用語集に載ることがあります。ただし確実な情報は限られます。
確認できる範囲
キューバの舞曲を指す語とされていますが、この語について確実に言えることは少なく、成立の経緯や具体的なリズム型、演奏習慣についての信頼できる情報は乏しいのが実情です。楽譜でこの語に出会った場合は、その楽譜の出典や作曲者の他の指示から性格を判断するほうが確実です。ここで推測を並べることは避けます。