幕間と劇の部分 — インテルメッツォ・アントラクト・ストレッタ
intermezzo(インテルメッツォ)は、元来オペラ・セリアの幕間に上演された短い喜劇的作品を指した語で、後には楽章のあいだに置かれる短い器楽曲も指すようになりました。intermedio(インテルメーディオ)は、ルネサンス期の演劇の幕間に上演された音楽と舞踊を伴う出し物です。
幕間と終わりの部分
entr'acte(アントラクト)はフランス語で「幕間」で、幕のあいだに演奏される音楽を指します。stretta(ストレッタ)は、楽曲や場面の終わりに向けてテンポを速めて盛り上げる部分、finalino は短い終曲です。
パスティッチョとプリマドンナ
pasticcio(パスティッチョ)は、複数の作曲家の既存の楽曲を集めて仕立てた作品を指します。prima donna(プリマドンナ)は「第一の女性」で、オペラ一座で主役を歌う女性歌手を指します。
劇やオペラの幕間の出し物
幕間に演じられた軽いコメディが発展し、やがて独立したオペラ・ブッファとなりました。
Intermezzo(インテルメッツォ、間奏曲)は、元来オペラ・セリアの幕間に上演された、軽い内容の短い喜劇的作品を指した語。後には器楽曲の楽章の間に置かれる短い曲を指す語としても使われるようになった。
幕間劇からの独立
18世紀前半、格式張ったオペラ・セリアの幕間に、気分転換として上演された小規模な喜劇的作品がインテルメッツォと呼ばれた。これらは題材の軽さと親しみやすさから人気を集め、やがて幕間の添え物にとどまらず、独立した作品として上演されるようになり、オペラ・ブッファの成立に影響を与えたとされる。
器楽曲での用法
19世紀以降は、交響曲や組曲の楽章の間に置かれる、比較的短く性格的な器楽曲を指す語としても使われるようになった。この用法では、幕間劇という原義から離れ、単に「間に置かれる小品」という意味で用いられている。
祝祭劇の幕間の出し物
オペラの前身。幕間に演じられた豪華な歌と踊りが発展し、やがて独立したオペラとなりました。
インテルメーディオは、演劇の幕間に上演された音楽と舞踊を伴う出し物です。オペラ成立の前史に位置づけられます。
幕間の出し物
ルネサンス期のイタリアで、劇の幕と幕のあいだに歌、舞踊、舞台装置を用いた場面が挿入されました。本編とは筋が独立していることも多く、神話を題材にした華やかな見せ物として発達しました。宮廷の祝祭で上演され、装置や衣装に費用が投じられました。
1589年フィレンツェの上演
メディチ家の婚礼を祝って上演されたインテルメーディオは、大規模なものとして記録に残っています。舞台機構を駆使した場面転換と、多声の合唱を含む音楽が用いられました。この上演に関わった音楽家の中から、後に初期オペラを手がける者が出ています。
オペラとの関係
幕間の出し物が発展して独立した音楽劇になったという単純な経路ではありませんが、音楽と舞台を結びつける技術と経験がここで蓄積されました。カメラータの議論が生んだ語るように歌う様式と、インテルメーディオが培った舞台の華やかさが結びついたところに、オペラが成立したと説明されます。
演奏のヒント
合唱・アンサンブル
本編の筋と独立した神話的な場面であることが多いため、演奏では本編の様式にとらわれず、その場面固有の華やかさを前面に出す扱いが適切です。
この指示が使われる曲
喜劇「ラ・ペレグリーナ」のためのインテルメーディオ(1589年)
フェルディナンド1世デ・メディチの婚礼を祝って上演された、当時最も豪華とされるインテルメーディオです。台本と音楽がほぼ全て現存しており、カメラータの活動とも深く関わりました。
間奏曲
劇やオペラの幕間に演奏される曲。前の場面の余韻を残しつつ、次の期待を高める役割を果たします。
アントラクトはフランス語で「幕間」。劇やオペラの幕のあいだに演奏される音楽を指します。
語の成り立ち
entre(〜のあいだ)と acte(幕)から成る語で、原義は「幕のあいだ」です。この語は時間としての幕間を指すとともに、その時間に演奏される音楽も指します。ドイツ語では Zwischenakt、イタリア語では intermezzo が対応します。
果たす役割
実務的には、舞台の転換や衣装替えの時間を埋めます。同時に音楽的な役割もあります。前の幕の余韻を保ち、次の幕の場面や気分を準備します。したがって単なる時間の埋め合わせではなく、劇の流れの一部として書かれます。
単独で演奏される例
ビゼーの《カルメン》の各幕への前奏曲や、シューベルトの《ロザムンデ》の音楽のように、劇から離れて演奏会で取り上げられるものがあります。付随音楽として書かれたものが、組曲の形でまとめられて残る例です。
関連する形式
ルネサンス期のインテルメーディオは、劇の幕間に上演された歌と舞踊を伴う出し物で、より大規模なものでした。これがオペラ成立の前史に位置づけられます。アントラクトは器楽による短い音楽である点が異なります。
演奏のヒント
オーケストラ全般
前の幕の余韻を保ちながら次の幕の気分へ移るには、冒頭を前の幕の最後の和声や音色に近づけ、そこから徐々に新しい場面の色へ変えていくと自然な橋渡しになります。
この指示が使われる曲
ビゼー「カルメン」第3幕・第4幕への前奏曲
本編から独立して演奏会でも取り上げられる、アントラクトの代表例です。
楽曲や場面の終わりで速度を上げて盛り上げる部分
フィナーレの直前にテンポを速め、興奮を高めて締めくくる。
Stretta(ストレッタ)は、楽曲や場面の終わりに向けてテンポを速め、興奮を高めて締めくくる部分を指す。
オペラのフィナーレでの用法
幕切れやフィナーレの直前でテンポを上げ、それまでの緊張を一気に解放するように盛り上げる部分として用いられる。合唱や複数の登場人物が同時に歌う場面で特によく見られる。
Strettoとの語源上の関係
「締め付ける、詰める」を意味するイタリア語 stringere に由来する点で、フーガの用語Stretto(主題が重なり合って現れる技法)と語根を共有する。ただし、指し示す音楽的な現象はそれぞれ異なる。
演奏のヒント
アンサンブル・合唱
テンポが上がっても、それまでの緊張が一気に解放される場面であることを見失うと、ただ速いだけになります。加速する直前の一瞬の間や、加速の始まりの一音を明確にすることが効果を生みます。
この指示が使われる曲
ロッシーニ「セビリアの理髪師」第1幕フィナーレより Mi par d'esser con la testa
第1幕の終わりで、登場人物たちが一斉に混乱を歌いながら加速していく箇所です。
Finalino は finale(終曲)に縮小辞 -ino が付いた形。「小さな終曲」、つまり短い規模の終結部分を指します。
縮小辞が示す規模
イタリア語の -ino は「小さな」を意味する縮小辞です。finale が楽曲や組曲全体を締めくくる大規模な終曲を指すのに対し、finalino はより短く、小規模な終わりの部分を指します。規模の指定であり、性格や速度を指定する語ではありません。
寄せ集めの、混ぜ合わせの
「パイ」が原義。複数の作曲家の曲などを寄せ集めて作った作品。
Pasticcio はイタリア語で「パイ、練り物」。そこから転じて、寄せ集めで作られた作品を指す語になりました。
料理から音楽用語へ
pasticcio は、さまざまな具材を混ぜて焼いたパイを指す料理の語です。中身が混ざり合っていることから、複数の出所のものを寄せ集めたものという意味が生じました。フランス語の pastiche も同じ語で、こちらは他の作家の様式を模倣した作品を指す語として美術や文学で使われます。
オペラの様式として
18世紀には、複数の作曲家の既存の楽曲を集めて1つのオペラに仕立てる形式が広く行われ、これを pasticcio と呼びました。人気のあるアリアを寄せ集めて上演するもので、当時の劇場の実務に根ざした形式です。作曲家の個性や作品の統一性を重んじる現代の見方とは、前提が異なります。
この指示が使われる曲
《ムツィオ・シェヴォラ》(1721年、ロンドン)
第1幕をアマデイ、第2幕をボノンチーニ、第3幕をヘンデルが作曲した、複数の作曲家による合作のオペラです。
Prima Donna は「第一の女性」を意味し、オペラ一座で主役を歌う女性歌手を指す。prima(第一の、女性形)と donna(女性、貴婦人。ラテン語 domina「女主人」に由来)の複合語。
オペラの序列を反映した呼称
17〜18世紀のオペラ・セリアでは、歌手の序列がはっきりしており、主役の女性歌手が prima donna、その次に位置づけられる役が seconda donna(第二の女性)と呼ばれた。プリマドンナという呼称そのものが、当時の一座の階層構造をそのまま言葉にしたもの。
演奏のヒント
声楽(ソプラノ)
一座の序列を反映する役柄では、単に技巧を誇示するだけでなく、その役に割り当てられた性格や地位の高さを声の張りと存在感で示すことが、序列そのものを音楽で体現することになります。
この指示が使われる曲
ヘンデルのロンドン・オペラ団におけるファウスティーナ・ボルドーニとフランチェスカ・クッツォーニの対立(1720年代)
ともにヘンデルの一座で主役を歌ったこの2人のソプラノの確執は、1727年、ボノンチーニの歌劇「アスティアナッテ」上演中に舞台上で取っ組み合いになったという逸話で知られます。ただしこの舞台上の乱闘そのものは後世の脚色である可能性も指摘されており、確実なのは観客とロンドンの社交界を二分するほどの激しい人気争いがあったという点です。