形式の音楽用語
33語を掲載(うち30語は詳しい解説ページつき)
形式が分かると、譜読みの手数が減る
形式は分析のための用語に見えますが、実際には練習の設計に直結します。どこが繰り返しで、どこが新しい素材かが分かれば、覚える量そのものが減るからです。
ソナタ形式は「調の物語」
ソナタ形式を主題の配置で覚えると、展開部で迷いやすくなります。この形式の骨格は主題ではなく調にあります。提示部で主調から属調(短調なら平行長調)へ移り、展開部で不安定な状態を経て、再現部ですべてが主調に統一される。第2主題が提示部と再現部で違う調になるのはこのためで、そこが再現部を聞き分ける最大の手がかりです。譜読みのとき、調号と臨時記号の変化を追うだけで構造の見当がつきます。
ロンドは「戻ってくる」形式
ロンド形式(A-B-A-C-A…)の要は、A が戻ってくるたびに聴き手が安心する、という効果です。演奏上は、A を毎回まったく同じに弾くのか、回を追って変化させるのかが解釈の分かれ目になります。古典派のロンドでは、最後の A の直前に最も遠い調やテンポの変化が置かれることが多く、そこが曲全体の山になります。ロンド・ソナタ形式のように、ロンドとソナタ形式が混ざった構造もあります。
フーガと変奏曲
フーガは形式というより手続きです。主題(Soggetto)が各声部に順に入り、応答(Risposta)が属調で答え、以降は主題の断片が対位法的に展開されます。演奏で最も重要なのは、いま主題がどの声部にあるかを聴き手に分からせることです。変奏曲は逆に、主題の何が保存され何が変えられているか(旋律か、和声進行か、低音か)を見極めることが出発点になります。パッサカリアやシャコンヌは低音の反復が保存される変奏形式です。
二部形式と三部形式
最も基本的な枠組みが、A-B の二部形式と A-B-A の三部形式です。三部形式は、戻ってきた A をどう扱うかで演奏が変わります。まったく同じに弾けば安定した印象になり、B を経た変化を反映させれば物語性が出ます。ダ・カーポ・アリアのように、戻りの A に装飾を加えることが様式上求められる場合もあります。メヌエットとトリオ、スケルツォとトリオも、大きく見れば三部形式です。
組曲と舞曲
バロックの組曲は、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグという舞曲を軸に構成されます。これらは単なる曲名ではなく、拍子・テンポ・アクセントの位置がそれぞれ決まっています。サラバンドが3拍子の2拍目に重心を置くこと、ジーグが複合拍子で跳ねること、といった約束を知っているかどうかで、譜読みの出発点がまるで変わります。舞曲名は、演奏解釈の指示そのものだと考えてください。
形式の用語一覧
Coppia
コッピア ・ イタリア語
二つ、ペア
二つの要素の対比。
Finalino
フィナリーノ ・ イタリア語
短い終曲
小規模な終わりの曲。
Dengue
デング ・ スペイン語
キューバの軽快な舞曲
独特なシンコペーションを持つリズム形式。
Ritornello form
リトルネロ形式 ・ イタリア語
合奏の反復句と独奏部が交互に現れる形式
合奏によるリトルネロ(反復句)が節目ごとに戻り、独奏部と対比する構造。
→ Ritornello form の詳しい解説を読むThrough-composed
通作形式 ・ 英語
曲全体を通して新しい旋律が展開される形式
有節形式とは反対に、歌詞の内容に応じて旋律が絶えず変化していく。
→ Through-composed の詳しい解説を読むSonata-rondo
ソナタ・ロンド形式 ・ 英語
ロンド形式とソナタ形式を組み合わせた形式
ロンドの主題回帰と、ソナタ形式の展開部・再現部の性格を併せ持つ構成。
→ Sonata-rondo の詳しい解説を読むDa capo aria
ダ・カーポ・アリア ・ イタリア語
A-B-Aの3部構成を持つバロック期のアリア形式
最初の部分を最後にもう一度演奏する指示によって3部構成が作られる、バロック・オペラの標準的なアリア形式。
→ Da capo aria の詳しい解説を読む