ピアノのペダルと手の指定 — una corda・m.d.・m.g.
una corda(1本の弦で)はピアノの左ペダル(ソフトペダル)を踏む指示で、tre corde(3本の弦で)でそれを解除します。m.d. と m.g. は、どちらの手で弾くかを指定する略記です。
手の指定
フランス語では main droite(m.d.、右手)と main gauche(m.g.、左手)、イタリア語では mano destra(m.d.)と mano sinistra(m.s.)や colla destra(c.d.)が使われます。m.d. はどちらの言語でも「右手」を指します。
「1本の弦で」。ピアノの左ペダルの指示
「1本の弦で」。ピアノの左ペダル(ソフトペダル)を踏む指示。
Una corda(ウナ・コルダ)はイタリア語で「1本の弦で」を意味し、ピアノの左ペダル(ソフトペダル)を踏む指示を表す。
ペダルが変えているもの
グランドピアノの左ペダルを踏むと、鍵盤とハンマーの機構全体がわずかに横にずれる。これにより、通常は1つの音に対して2本または3本張られている弦のうち、ハンマーが打つ弦の本数が減り、音量だけでなく音色そのものが柔らかく変化する。
単なる音量調整ではない
アップライトピアノの左ペダルはハンマーと弦の距離を単純に縮めるだけの仕組みが多く、音量は下がっても音色の変化はグランドピアノほど顕著ではない。Una cordaはこの音色の変質そのものを意図した指示である。
「3本の弦で」。ウナ・コルダを解除する指示
「3本の弦で」。una corda(左ペダル)を解除する指示。
Tre corde(トレ・コルデ)はイタリア語で「3本の弦で」を意味し、Una corda(左ペダル)の指示を解除する合図として使われる。
Una cordaとの対応関係
左ペダルを踏んでUna cordaの状態にした後、通常の音色に戻すべき箇所でTre cordeと指示される。すべての音に3本の弦が張られているわけではないが、「元の状態、すべての弦を使う状態に戻す」という意味で伝統的にこの語が用いられている。
右手で
フランス語で「右手(で)」。m.d. と略される。
Main droite はフランス語で「右手」を意味する語。楽譜では「右手で」という指示として使われる。
Colla destra との違い
意味も用法もイタリア語 colla destra と変わらない。使われる言語が、楽譜の出版地や作曲家の言語圏によって異なるだけである。
左手で
フランス語で「左手(で)」。m.g. と略される。
Main gauche はフランス語で「左手」を意味する語。楽譜では「左手で」という指示として使われる。
Main droite と対で使われる
鍵盤楽器やハープの楽譜で、main droite(右手で)と対になって現れ、声部やパッセージをどちらの手で弾くかを指定する。指定がないと不自然な運指になる箇所や、両手の受け渡しを明確にしたい箇所で使われる。
c.d.Colla destraコッラ・デストラ
イタリア語
Colla destra はイタリア語で「右手で」の意。colla は con la(〜を用いて、女性形)の縮約形、destra は「右(の手)」を意味する。
両手の役割を指定する指示
鍵盤楽器やハープなど両手を使う楽器の楽譜で、ある声部やパッセージをどちらの手で弾くべきかを明示するために使われる。指定がないと弾きにくい、あるいは音色が変わってしまう箇所で指示されることが多い。
左手で
フランス語で「左利きの」。「左手で」は通常 main gauche と書く。
Gaucher はフランス語で本来「左利きの(人)」を意味する語だが、楽譜の注記では「左手で」というニュアンスで使われることがある。
本来の意味と楽譜での使われ方
フランス語として厳密には、「左手で」を表す通常の言い回しは main gauche である。gaucher は形容詞・名詞として「左利きの(人)」を指す語だが、楽譜の注記の中には、左手を使うパッセージを示す目的でこの語が用いられている例がある。
Col pollice はイタリア語で「親指で」の意。col は con il(〜を用いて)の縮約形、pollice は「親指」を意味する。
チェロのサムポジション
チェロでは高いポジションを弾く際、親指を指板に横向きに置いて弦を押さえる「サムポジション」が使われる。col pollice はこの親指を使う奏法を指示する語で、通常の指使いでは届かない高音域や、和音を押さえる際に用いられる。
Alzamano はイタリア語 alzare(上げる)と mano(手)を組み合わせた語で、文字どおりには「手を上げて」。
Bras はフランス語で「腕」を意味する語。弦楽器の教則やボウイングの指導で、手首だけでなく腕全体を使う動きを指す際に使われることがある。
手首と腕の使い分け
弓を動かす際、短く繊細な動きは主に手首と指で、大きく長いストロークは腕全体の動きで支える必要がある。bras という語が指導や楽譜の注記に現れる場合、手首だけでなく腕全体の動きを意識するよう促す指示として使われる。