敬虔と厳粛 — Religioso・Solenne・Feierlich
religioso(レリジオーソ)は「宗教的に、厳かに」。devoto(敬虔に)と con devozione(献身的に)は、ラテン語 devovere(誓って捧げる)に由来します。
厳粛さ
solenne(厳かに)はラテン語 sollemnis(厳粛な、祭儀の)に由来し、ベートーヴェンの《ミサ・ソレムニス》の solemnis もこの語です。ドイツ語の feierlich(おごそかに、祝典的に)は Feier(祝祭)から作られた語です。
Religioso は「宗教的に、厳かに」。ラテン語の religio に由来します。
語源
religio の語源については、relegere(読み返す、注意深く行う)に由来するという説と、religare(結び直す)に由来するという説があります。いずれの説でも、注意深さや結びつきという含みが指摘されています。英語の religion も同じ語です。
演奏上の判断
個人的な感情の表出を抑え、澄んだ響きを保つ方向の指示です。音量を落とすこととは違い、雑味のない音を作ることが要点になります。教会の空間を前提とした響きを想定する場合、残響を含んだ長い音の扱いが関わります。
Devoto は「敬虔に、献身的に」。ラテン語の devovere(誓って捧げる)に由来します。
「誓って捧げる」という語源
de(完全に)と vovere(誓う)から成る devovere の過去分詞に遡ります。原義は「誓いによって捧げられた」です。英語の devout、devote、devotion、そして vow(誓い)も同じ語根です。自己を差し出すという含みが語の成り立ちに含まれています。
演奏上の判断
自己を差し出す方向の語であるため、演奏者の表現を前に出すこととは逆になります。個人的な感情の表出を抑え、音そのものを澄んだ状態で置くことが指示に沿った扱いです。音量を落とすことより、雑味のない響きを作ることが要点になります。
近い語との関係
con devozione(献身をもって)が名詞形を用いた同内容の指示です。religioso(宗教的に)は信仰そのもの、solenne(厳かに)は儀式の形式性を指します。devoto は態度としての献身が中心にあります。
♪Con devozioneコン・デヴォツィオーネ
イタリア語
Con devozione は「献身的に、信心深く」。ラテン語の devovere(誓いを立てて捧げる)に由来します。
語源
de(完全に)と vovere(誓う)から成り、原義は「誓って捧げる」です。英語の devotion、devout も同じ語根です。宗教的な文脈から来た語であり、自己を差し出すという含みを持ちます。
演奏上の判断
自己を差し出す方向の指示なので、演奏者の表現を前に出すこととは逆になります。個人的な感情の表出を抑え、音そのものを澄んだ状態で置くことが指示に沿った扱いです。religioso と近い方向にありますが、こちらは態度としての献身を指します。
厳かに、荘重に
宗教的な儀式を思わせる、敬虔な響き。
Solenne は「厳かに、荘重に」。ラテン語の sollemnis(厳粛な、祭儀の)に由来します。
語源
ラテン語の sollemnis は、sollus(全体の)と annus(年)から成ると古くから説明されてきましたが、この語源には異論もあります。意味としては、決まって行われる祭儀にかかわる「厳粛な、公式の」を表す語です。英語の solemn も同じ語です。
Missa solemnis
ラテン語形の solemnis は、ミサの種別を指す用語としても使われます。荘厳ミサ(Missa solemnis)は、簡素な形式に対して、より大規模で儀式的に整えられた形式を指します。ベートーヴェンの《ミサ・ソレムニス》作品123 がこの名で知られる作品です。
演奏上の判断
儀式的な性格であるため、テンポは落ち着き、一歩ごとに重みが置かれます。速く駆け抜けると厳粛さが失われます。同時に、個人的な感情の表出を抑えることが求められます。maestoso が威厳、religioso が信仰を主体とするのに対して、solenne は儀式としての形式性が中心にあります。
演奏のヒント
共通
テンポをやや遅めに保ち、和音の変化ごとに重みを置くと、儀式的な荘重さが生まれます。
この指示が使われる曲
ヘンデル 戴冠式アンセム「Zadok the Priest」
1727年のジョージ2世の戴冠式のために書かれ、以後の英国の戴冠式で歌われてきた儀式のための音楽です。
おごそかに、祝典的に
ドイツ語で「おごそかに、祝典的に」。
Feierlich は「おごそかに、祝典的に」。ドイツ語 Feier(祝祭、祝典)に、形容詞を作る接尾辞 -lich を付けた語。
Feier の語族
Feier はラテン語 feriae(祝祭日、休日)に由来するとされ、英語 fair(見本市、もとは「祝祭・市」を意味した語)も同じ語根を共有するという説がある。宗教的・儀式的な厳かさを伴う場面で使われる。