怒りと荒々しさ — Furioso・Feroce
furioso(フリオーソ)は furia(激怒、狂乱)から派生した語で「荒れ狂って」。フランス語では furieusement です。feroce(荒々しく)はラテン語 ferus(野生の)に由来します。
怒りを表す語
con rabbia(怒り狂って)の rabbia はラテン語 rabies(狂気)に由来し、collerico(怒って)は胆汁を意味するギリシャ語 kholē に由来します。
荒々しさを表す語
barbaro(未開の、野蛮な)、asperamente(厳しく、荒々しく)、scatenato(鎖を解かれた)、bacchante(バッコスの信女のような)、bruscamente(不意に、ぶっきらぼうに)は、それぞれ異なる像から荒々しさを表します。
猛烈に、荒れ狂って
furia(激怒)から。「荒れ狂って」。
Furioso は「荒れ狂って」。furia(激怒、狂乱)から派生した語です。
furia という語
ラテン語の furia に由来し、ローマ神話の復讐の女神たち(フーリアエ)の名でもあります。英語の fury、furious も同じ語源です。単なる怒りではなく、我を失った状態を含む語です。
制御を失うことと崩れること
この指示は激しさを求めますが、演奏が崩れることを求めているわけではありません。制御を失っているように聞こえるためには、実際にはリズムと音程が保たれている必要があります。実際に崩れると、狂乱ではなく事故として受け取られます。
♪Furieusementフュリューズマン
フランス語
Furieusement はフランス語で「猛烈に、荒れ狂って」。イタリア語の furioso に相当します。
語源
ラテン語の furia に由来し、これはローマ神話の復讐の女神たち(フーリアエ)の名でもあります。英語の fury、furious も同じ語源です。単なる怒りではなく、我を失った状態を含む語です。フランス語では形容詞 furieux に副詞語尾 -ment が付いて furieusement になります。
制御を失うことと崩れること
この指示は激しさを求めますが、演奏が崩れることを求めているわけではありません。制御を失っているように聞こえるためには、実際にはリズムと音程が保たれている必要があります。実際に崩れると、狂乱ではなく事故として受け取られます。
荒々しく、野生的に、激しく
ラテン語 ferus(野生の)から。「荒々しく」。
Feroce は「荒々しく、野生的に」。ラテン語の ferus(野生の、獣の)に由来します。
獣という語源
ferus は野生動物を指す語で、英語の fierce、ferocious も同じ語根です。したがってこの指示は、人間の怒り(furioso)とは違い、洗練されていない、獣のような強さを求めています。整えられた美しさとは逆の方向です。
音色の選択
洗練を避ける方向なので、丸く整った音ではなく、角のある音が指示に沿います。弦楽器なら弓を強く当てて雑音成分を残す、ピアノなら打鍵を鋭くする、といった扱いになります。ただし音程やリズムが崩れると、荒々しさではなく粗さになります。
Con rabbia は「怒り狂って」。rabbia はラテン語 rabies(狂気、激しい怒り)そのままの子孫で、英語で狂犬病を指す rabies も同じ語源。
「狂気」を意味した語
ラテン語 rabies は本来、動物や人が理性を失って荒れ狂う状態を指した。狂犬病にかかった動物の狂暴な様子からこの病名が生まれ、同じ語がイタリア語では感情としての「激しい怒り」を意味するようになった。con rabbia は数ある怒りの表現の中でも、抑制を失った激しさを指す点で際立つ。
腹を立てた、怒った
「怒って」。ギリシャ語の kholē(胆汁)に由来する語。
Collerico は「腹を立てて、怒って」。ギリシャ語の kholē(胆汁)に由来する語です。
体液説に由来する語
古代ギリシャの体液説では、黄色い胆汁が多い気質が怒りやすい性質にあたるとされていました。英語の choleric、フランス語の colère も同じ語根です。malinconico(黒い胆汁)と対をなす語で、どちらも同じ体液説の枠組みから来ています。
怒りの種類
furioso が我を失った狂乱を指すのに対して、collerico は気質としての怒りやすさ、あるいは苛立ちを含みます。爆発ではなく、抑えられていない不機嫌という方向です。
荒々しく、未開の
「未開の、荒々しく」。バルトークのピアノ曲「アレグロ・バルバロ」の題に使われている。
Barbaro は「未開の、野蛮な」。洗練をあえて排し、原初的な力を求める指示です。
語源
ギリシャ語の barbaros に由来します。この語はもともと、ギリシャ語を話さない者を指す語でした。そこから「未開の」という意味が生じています。英語の barbarian、barbaric も同じ語源です。
バルトークの《アレグロ・バルバロ》
バルトークのピアノ曲《アレグロ・バルバロ》は、この語を曲名に用いた作品です。打楽器的な打鍵と繰り返される強い和音を用いた書法で知られています。
演奏上の判断
洗練を排する方向の指示ですが、それは技術を捨てることではありません。硬く角のある音を意図して作るには、打鍵や弓の制御が必要です。制御を失った演奏は、barbaro ではなく単に不正確な演奏になります。
演奏のヒント
ピアノ
打楽器的な扱いを作るには、指を寝かせず、鍵盤の底を突くように打鍵します。ただし手首を固めると怪我につながるため、打った直後に力を抜くことが必要です。
この指示が使われる曲
バルトーク「アレグロ・バルバロ」
曲名にこの語をそのまま用いた作品です。打楽器的な連打と強いアクセントの和音を特徴とし、洗練を排した原初的な力を音にしています。
厳しく、荒々しく、ざらついた
aspro(粗い)の副詞形。「厳しく、荒々しく」。
Asperamente は「厳しく、荒々しく」。aspro(粗い、辛辣な)の副詞形で、あえて美しさを排することを求めます。
「ざらざらした」という語源
ラテン語の asper(粗い、でこぼこの)に由来します。英語の asperity(辛辣さ)、exasperate(いらだたせる)も同じ語根です。原義は表面がざらついていることで、そこから厳しさ、辛辣さという意味が生じました。触覚に由来する語である点が特徴です。
意図的な粗さ
この指示は、演奏を整えないことを求めます。丸く美しい音ではなく、角のある音、抵抗を感じさせる音です。弦楽器では弓の圧力を強めて雑音成分を残す、ピアノでは打鍵を鋭くするといった扱いになります。ただし音程やリズムが崩れると、意図した粗さではなく単なる不正確さになります。
Scatenato は「鎖を解かれた」。catena(鎖)を語根に持ち、抑制を失った奔放な力を指します。
「鎖を外す」という語源
ラテン語の catena(鎖)から動詞 scatenare(鎖を解く、解き放つ)が作られ、その過去分詞が scatenato です。s- は分離を示す接頭辞です。英語の chain、concatenate(連鎖させる)も同じ catena に連なります。したがってこの語が示すのは、それまで拘束されていたものが解放された状態です。
前提としての拘束
鎖を解かれたという語であるため、その前に拘束があったことが前提になります。したがってこの指示は、それまで抑えられていた箇所の後に置かれるときに最も効果を持ちます。抑制のない状態が続いた後では、解放として聞こえません。
演奏上の判断
奔放さを表すためには、実際に崩れてしまってはいけません。制御を失っているように聞こえるためには、リズムと音程が保たれている必要があります。振れ幅を最大に取り、しかし骨格は保つという扱いになります。
熱狂的な、酒神の巫女のような
「バッコスの信女」。我を忘れた熱狂を指す語として使われる。
バッコスの信女を指す語で、理性を離れた熱狂的な高揚を求める指示として用いられます。
バッコスの信女
バッコス(ギリシャ神話のディオニュソス)を崇拝する女性たちを指す語です。マイナスとも呼ばれ、神に憑かれて我を忘れた状態で山野を巡ったと伝えられます。エウリピデスの悲劇《バッコスの信女》がこの題材を扱っています。したがってこの語が指すのは、制御された情熱ではなく、我を失った熱狂です。
ディオニュソス的という概念
ニーチェは《悲劇の誕生》で、秩序と形式を担うアポロン的なものと、陶酔と混沌を担うディオニュソス的なものという対を提示しました。この枠組みは芸術論で広く参照されており、bacchante という語もその文脈で読まれることがあります。
演奏上の判断
我を失った状態を表すためには、実際に崩れてしまってはいけません。制御を失っているように聞こえるためには、リズムと音程が保たれている必要があります。振れ幅を大きく取り、しかし骨格は保つという扱いになります。
演奏のヒント
オーケストラ全般
熱狂を作るには、テンポを速めるだけでなく、リズムの反復を執拗に保つことが有効です。オーボエなど特定の楽器に異国的な旋律を担わせ、そこに打楽器の反復リズムを重ねる書法が伝統的に用いられてきました。
この指示が使われる曲
サン=サーンス「サムソンとデリラ」より バッカナール
第3幕の「バッカナール(酒神祭の乱舞)」と題された舞踏音楽です。
不意に、ぶっきらぼうに
「不意に、ぶっきらぼうに」。
Bruscamente は「不意に、ぶっきらぼうに」。brusco(無愛想な、急な)の副詞形です。
準備しないこと
この指示が求めるのは、変化に準備を与えないことです。音量やテンポの変化を滑らかにつなぐと、この語の指す唐突さが失われます。したがって、その手前まで前の状態を保ち、切り替わる瞬間に一気に変えるという扱いになります。
演奏の慣習との衝突
演奏では一般に、変化を自然につなぐことが求められます。bruscamente はその慣習をあえて破る指示です。滑らかにしようとする習慣が働くと、この指示は実現されません。意識してつながりを断つ必要があります。